最近めざましく進歩している大動脈基部の手術について概略しました

4. 大動脈基部の手術について

 「大動脈基部」というのは、大動脈弁と冠動脈の出口を含めた、大動脈の根元のことです。この部位を取り替えてしまうのが「大動脈基部置換術(以下基部置換)」です。「弁膜症の手術」に分類しましたが「大血管の手術」でもあります。

■対象となる疾患

  • 大動脈基部拡張症

 これは文字通り、大動脈基部(つまり大動脈の根元)が拡張し、大動脈弁逆流を生じた病態のことで、単一の病気ではなく、様々な原因によって起こります(右図)。

 頻度が多いものでは、マルファン症候群という遺伝性の疾患があります。これは主に大血管に異常をきたす全身疾患です。また原因不明で起こるものもあります。その他、膠原病、梅毒、大動脈炎など特殊な全身疾患でも起こります。

  • 大動脈解離で解離が基部にまで及ぶ症例
  • 感染性心内膜炎で大動脈弁輪に膿が貯まってしまった症例
  • バルサルバ洞動脈瘤破裂

■手術の方法

  

    大動脈基部置換術(Bentall型手術)

     この手術は、大動脈弁を人工弁で取り替えて、さらにそこから出ている上行大動脈も人工血管で取り替えます。つまり、左図のように人工血管に人工弁を縫いつけたものを、大動脈の根本(=左室の出口)に縫いつけるのです。その間に冠動脈の出口がありますが、それもくりぬいて人工血管に縫い付けます(左図)。ステントレス弁をそのまま基部に使うこともあります。

    大動脈弁温存手術

     大動脈基部の手術で、自分の大動脈弁はそのままにして(温存して)、上行大動脈を特殊な方法で人工血管に取り替える方法があります。詳しくはこちらをご覧下さい。